映画「Girl/ガール」 思春期って…欧米の子育てって…
思春期はまだまだ遠い我が娘。
習い事の最中でも何かと私をちらちら見る娘。
彼女の世界の中心には私が君臨している。
…が、思春期でそれは大きく変化するんだろうなぁとこの作品を観て思いました。また、自分もこの頃、ララのように自分と親が別個の存在を意識したなと思い出しました。
主人公は美しいトランスジェンダーの少女ララ。
彼女は男性の肉体を持ちながらも、女性の肉体の美を追求するバレリーナになることを望んでいます。
文字通り血のにじむ努力をし、ペニスをテープできつく覆って隠し、心ないいじめにも耐えながらも、折れそうなはかない翼で上へ上へと飛んでいこうとする。
ララのお父さんはとても愛情深い人。
トランスジェンダーであるララを全面的に受け入れ、彼女のために引越しまでしてバレーの学校に入学させ、高い医療費を払ってホルモン治療も受けさせている。ララの家はお母さんがいないので、お金だけではなく、生活面、精神面もお父さんがすべてになっている。
それなのに、ララは練習が過酷であること、テープのこと、いじめのこともお父さんに頑なに打ち明けない。思春期の繊細な心がそうさせるのだろうし、誰よりも自我が強く、純粋だから、自分であることを妥協しないために一人で戦ったのだと思えた。男でもなく、女でもなく、たった一人の自分のために。優しい親の手を振り払うことが必要な時もあるんだなぁ…。
それはトランスジェンダーという大変な状況でなくても、人が対峙する普遍的なことだと思う。
親ができるのは、どんな結果でも子どもを受け入れ、手を握ってやるだけ。思春期は本当に大人の入り口なんだなぁと思った。
それから、お父さんを通してみえる欧米の子育てには驚いた。
日本だと父親は子育ての実務に関わらないくせに、支配的で強引なことが多いのに、ララのお父さんの寛容さ、寄り添い方は神の領域…。
日本だとそもそも親が子を変えるというスタンスでくるケースが多い。でも、このお父さんは助けになろうとしているけど、変えようって気持ちは一切ない。
これが男性でもできるなら、子育ては男性でも可能だってことだよね。
痛々しく美しすぎて、あーもうみてられない!という気持ちになりながら魅了された映画でした。